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青年の主張
「盟友による盟友のための
システム」
JAいるま野東部後継者部会
塩野 雅之さん

2月中旬、第67回JA全国青年大会がオンラインで開催されました。全国農協青年組織協議会(JA全青協)が主催したもので、全国のJA青年部員ら1,700人超が参加しました。大会では、新型コロナウイルスの影響で制約を受ける中でも挑戦を続ける各地の事例を共有。若手農業者9人が、青年部活動や農業にかける想いを発表しました。(3ページ表参照)
その中で、先に開かれた埼玉県大会と関東・甲信越大会で代表に選ばれた塩野雅之さん(JAいるま野東部後継者部会)は、会員同士が労働力や農機、圃場ほじょう、知識や技術を融通し合うシステムを提案。会員の結集による可能性を示し「ネットワークの活用により全国の盟友が密となり、これからの日本農業を明るいものにしていこう」と呼び掛けました。
今月号の特集では、大会当日に発表した塩野さんの主張「盟友による盟友のためのシステム」の全文をご紹介します。

JAいるま野東部後継者部会 
塩野 しおの 雅之 まさゆき さん

昭和57年(1982年)9月生まれ。カブやトウモロコシを中心に、ハクサイやダイコン、ホウレンソウ、エダマメなどを栽培。現在、同部会三芳支部長、4月からJA埼玉県青年部協議会の副委員長を務める。自身が掲げる「盟友による盟友のためのシステム」は、今大会で「JA全青協会長賞」を受賞した。

第一のシステム
「盟友が盟友を雇用する」

私が掲げる「盟友による盟友のためのシステム」とは、これからの日本農業を明るいものとする画期的なシステムになると信じています。

 

現在、私は1.5ヘクタールの畑をほぼ1人で耕作しています。出荷先としては直売所、スーパー、地元飲食店、加工会社、そして共販出荷。その時々で最適な出荷先を選定していますが、すべての取引先を満足させることはなかなか難しいのが実情です。

就農当時は父、母、祖父、叔父、そして私の典型的な家族経営でした。しかし9年前、父が突然亡くなり、我が家の経営は一変したのです。家族経営と言っても父と私がほとんどの作業を行なっていたため、1人では全く回らない。奇しくも収穫の全盛期で相当数のロスを覚悟しました。

しかし、私を心配した盟友が仕事を手伝いに来てくれたのです。彼は「ちょうど暇な時期だから」と、自分の仕事の合間に1カ月近く手伝いに来てくれました。そのお陰で最少限のロスで済み、農業へのモチベーションを保つことができました。

そこで私が考える第一のシステムは、「盟友が盟友を雇用できる」システムです。皆さん、自分がもう1人居たらもっと稼げるのになぁ…って思うことはありませんか?若い力は相当な戦力です。ですが、社員やアルバイトとして常勤させるほど人件費は掛けられない。そんな時、忙しい時だけ、1日でも半日でも雇うことができる。同じ人だけではなくその都度タイミングが良い人が来てくれるのです。

皆さん、農家って毎日忙しい時もあれば、この時期は、あるいは今週は暇なんだよなぁ…ってことはありませんか?そんな時に忙しい盟友の仕事を手伝いに行く、そんなマッチングシステムを作りたいのです。

私は大学時代、そして就農してからも他の農家で研修やアルバイトをしていました。我が家のやり方と研修先の作業の仕方は違うものです。良いものは吸収して取り入れることができますし、他の農家で働くメリットになります。研修先でも、我が家のやり方を取り入れてくれたこともあります。

また、このシステムは昨今の災害で被害を受けた盟友の助けにもなると思うのです。もちろんボランティアが来てくれることがベストですが、難しい時は盟友を雇用し復旧作業を手伝ってもらう。賃金は募金や保険、基金などで賄うことも可能です。

数年前の青年の主張で、新規就農し技術を教えてもらう代わりに高齢により経営規模を縮小していた農家に手伝いに行くという話を聞いた時、まさにこれがこれからの日本農業に必要なことだと思いました。我が家の経営をしながら収入と知識、そして労力を得られる画期的なシステムです。

埼玉県大会では、知事賞・優秀賞を受賞しました。
(広報誌『いるま野』2020年12月号10ページ参照)

第二のシステム
「機械を盟友にレンタルする」

皆さん、トラクターは年間何時間稼働していますか?農業には、さまざまな作業に特化した機械がたくさんあります。ですが、常に使っているのではなく、その都度最適な作業を行ってくれる年に数回しか使わない機械もあると思います。

そこで私が考える第二のシステムは、「機械を盟友にレンタルできる」システムです。

もちろん共同購入というやり方もありますが、すべてを補うのは難しいですし、使う時期が重なることもあるでしょう。

皆さん、機械を購入するタイミングって壊れた時や調子が悪くなった時が多いですよね?すぐに使いたいのに使えない。農業は時期によって1週間作業ができないだけで、1カ月もの間仕事がなくなってしまう、なんてことにもなります。そんな時にすぐに使えるレンタルシステムがあったら便利ですよね。

また、特殊機械、自動運転車、ドローンなどは盟友に作業をしてもらったり、操作方法を教えてもらうことも可能なのです。

そんなことをしたら「新しい機械が売れないじゃないか」と、地元の機械屋さんは思うかもしれませんが、機械屋さんには積極的にレンタル事業に参加して欲しいのです。私たちは最新の機械を試すこともできますし、その機械が気に入れば購入することも可能なのです。

高額な機械の購入費用を節約し、空き時間にレンタルすることによって収入を得ることができるのです。

出荷作業中の塩野さん。出荷先では出荷物の良し悪しはもちろん、その理由も確認するようにしています。

第三のシステム
「盟友同士で圃場を融通する」

皆さんは連作障害が発生しないよう、いろいろと工夫されていると思います。また、この作物を作ったあとにこの作物を作ると良いものができるとか、この作物を作ったら何年か期間を空けなければならないことはありませんか?

そんな時に、「盟友の圃場と自分の圃場を融通し合うことができる」、それが第三のシステムです。

上手く使えば圃場を集約し効率的に作業ができますし、使わない圃場を盟友に貸すことによって地力維持と除草効果も期待できます。

第四のシステム
「盟友同士で情報を共有する」

皆さんは、新規導入の作物や試験的に試したい作物がある時はどうしていますか?本やインターネットで調べたり、種子屋さんやJAに聞いている方が多いと思います。もちろんそれも良いのですが、「先に始めた盟友の知識を文章や動画にして、盟友同士で共有できる」、それが第四のシステムです。

実際に導入している盟友の知識には説得力がありますし、さまざまな知識を共有することによって先に始めた盟友自身もさらに勉強になることもあるでしょう。

また、Yahoo!知恵袋のように分からないことを投稿すると、盟友に答えてもらえる。そんなシステムを作りたいのです。

今年のカブは暖かな気候と適度な雨量に恵まれ、生育は順調。その出来栄えに納得の表情を浮かべます。

結びに…

現在の日本農業は大規模集約化し効率を上げることも大事ですが、やはり支えているのはこだわりを持った農家や臨機応変に対応できる小規模農家です。

このシステムは私たち小規模農家のためのみならず、これから農業を始めたいと思う人たちのハードルを下げ、新規就農者を増やすことにも繋がると思うのです。

TPPやFTA合意により、今後日本農業の環境はますます変わっていくでしょう。私たちは盟友でありライバルですが、共に協力しレベルアップしていくことが求められています。

10年後、20年後、そして子どもや孫たちがこの日本で農業を続けていけるかは、今現役の私たちが真剣に考えなければならないのです。

私が掲げるこのシステムは私だけの考えではなく、盟友のさまざまな疑問から生まれたポリシーブック(※)なのです。ですので、このシステムは常に盟友の力でアップデートしていかなければならない、「盟友による盟友のためのシステム」なのです。

JA職員と生育具合を確認。塩野さんは“本業”のほか、地域の交流の場にも積極的に参加するなど多忙な日々を送ります。

私たちは、三芳支部約50人のLINEグループでさまざまな情報を発信しています。今後はInstagramやFacebook等のSNSも活用し、より多くの情報を手軽に共有していきたいと思います。そして次年度以降、JAや青年組織とも協力し新たな制度設計を行い、多くの組合員が安心して使えるシステムを作っていきます。

近い未来、北海道でアスパラガスの収穫や沖縄でパイナップルの栽培…。そんな研修旅行も計画していきたいです。

このコロナ禍で人と人が密になることはできませんが、ネットワークの活用により全国の盟友が密となり、これからの日本農業を、ぜひ明るいものにしていきましょう。

 

(※)ポリシーブック=「自助・共助・公助」の考え方を基本に、地域・営農で抱える課題や悩みを解決すべく、どう取り組んでいくかを示した活動方針集・政策提言集。全国農協青年組織協議会(JA全青協)のホームページで閲覧できる。(http://www.ja-youth.jp/

第67回JA全国青年大会の発表者・テーマ

青年の主張
「オールドルーキー」
(福島県)JA会津よつば青壮年部只見支部 
吉津紘二さん
「盟友による盟友のためのシステム」
(埼玉県)JAいるま野東部後継者部会 
塩野雅之さん
「一本の鍬(くわ)で切り開く三方原馬鈴薯物語」
(静岡県)JAとぴあ浜松
青壮年部 磯貝将大さん
「どんな時でも、どんな年でも進み続ける」
(滋賀県)JA栗東市(現 JAレーク滋賀)
青壮年部 小谷隆介さん
「日々挑戦する事の意味」
(島根県)JAしまね斐川青年連盟 伊藤尚幸さん
青年組織活動実績発表
「おらほのコメが酒になる~あれから8年 酒米づくりがおれらを変えた~」
(秋田県)JA秋田おばこ青年部協和支部 
佐藤智治さん
「『美味(おい)しい』『新鮮』『安全』『安心』国分寺三百年野菜 こくベジプロジェクト~地域の方々と、共に学びながら育んでいく『地産地食』~」
(東京都)JA東京むさし国分寺地区青壮年部 
内藤宏和さん
「目指せ、農業の町焼津!!」
(静岡県)JA大井川青壮年部 八木栄幸さん
「コロナを乗り越え、未来をつくる青壮年部の人・物・知恵!!」
(岡山県)JA晴れの国岡山
つやま青壮年部東部支部 仁木紹祐さん

今大会を振り返って

新型コロナウイルスの影響でオンラインでの開催となりましたが、開催に向けてご尽力いただいた皆さまに深く感謝申し上げます。

JA全国青年大会は、全国の盟友が一斉に集う場です。各地域のさまざまな取り組みを肌で感じながら、たくさんの盟友の意見を聞くことができ、大いに参考になりました。

今回、私が呼び掛けた主張は、自らの農作業にプラスになることはもちろんですが、新規就農者にとってもメリットのあるものになるでしょう。私たちとの懸け橋となり得るこのシステムを活用することで、新規就農の促進につながれば幸いです。また、いるま野管内の各地域の盟友の皆さんも、この主張をご覧になって何かを感じてもらえたら嬉しく思います。

私にとって盟友とは、ライバルであると同時に、この先も一緒にがんばっていける大切な仲間です。これからも多くの盟友とともに、農業の発展に力を尽くしていきたいと思います。