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羽ばたけ!新規就農者

八木澤 勝一 さん(66歳)

(川越市かわつる三芳野)

農業の奥深さを追求。
元エンジニアの頭脳が
生み出すこだわり農法

エンジニア歴を活かした新規就農者

季節外れの暑さが続く10月上旬。川越市の研修地で作業をする八木澤勝一さん。現在、約50アールの面積でラッカセイやサツマイモ、ジャガイモ、ハクサイなど年間約15品目の季節野菜を栽培しています。収穫した作物は、JAあぐれっしゅ川越鶴ヶ島農産物直売所などのほか、研修地の一角で販売しています。
八木澤さんは、令和2年度「いるま地域明日の農業担い手育成塾」に入塾しました。30年もの間エンジニアとして活躍していましたが、定年退職後の2018年に埼玉県農業大学校に入学。実習を受けている内に「農業はどうしてこんなに難しいのだろうか。もっと良い方法で栽培できないか」と疑問を抱き、日本農業技術検定2級やトラクターの運転免許、農業機械士などの資格を取得するなどし、本格的に農業を始めようと決心しました。

必要な栄養素などを分析し、生育状況や出来栄えを撮影。作物ごとに分かりやすく記録し、ファイリングしています。

こだわり農法で栽培!技術の確立目指す

八木澤さんはエンジニアだった経験を活かし、こだわりの農法で作物を栽培しています。その農法とは、作物の発育段階や生育状況に見合った肥料を与える作物栽培理論「栄養週期理論」を基にした栽培方法。有機無農薬栽培で、作物が同じような大きさに生育し収量も見込めるという、こだわりの農法です。八木澤さんは「入塾以来、さまざまな農法を試してきた。今後も研究を重ね、それぞれの作物に適した農法を確立させたい」と意欲を見せます。
八木澤さんは毎朝、5時には畑に向かいます。この時期は、ラッカセイやサツマイモなどの収穫で大忙し。「野菜も子育てをするように」と植えたばかりのハクサイの苗を手に笑顔を見せます。
「自分の強みは、忍耐力があること。失敗しても諦めずに、なぜ上手くいかなかったのかを考える」と話す八木澤さん。熱心なあまり考え込みすぎて眠れなくなってしまう時もしばしば…。そんな八木澤さんは「農業は、無限の可能性を秘めている。だからこそ農業という職業は面白くて楽しい」と話します。

完成までに通常1カ月かかるぼかし肥料。約10日間で完成する方法を編み出しました!

収穫期を迎えたサツマイモ。こだわり農法のおかげで、程よい形状・大きさに。もちろん、収量も十分です。

収穫後、水洗いしたラッカセイを手にし、納得の表情を見せる八木澤さん。出荷作業も1人で行います。

互いに高め合う存在 
指導農家も認める腕前

指導農家の役割を担う大室正一さん(61)。大室さんは、就農して35年のベテラン農家。ブドウや米、キュウリなどを栽培しています。「今年、初めてサツマイモを栽培した。八木澤さんに教えてもらったこだわりの農法で栽培したら、見事にキレイなサツマイモが収穫できたよ」と笑顔で話す大室さん。実は八木澤さん、以前から大室さんのブドウの大ファン。そこで、ブドウの栽培方法がほかの作物にも応用できないか…と考えるようになったのを機に、大室さんから剪定や単肥の使い方なども学ぶようになったのです。
「畑を覗くと八木澤さんはいつも真面目に作業している。塾生とは思えないほどの腕前で関心する。指導農家の立場だが、八木澤さんから教わることも多々ありますよ」と評します。

パワーの源と今後の想い

毎日多忙な八木澤さん。パワーの源について伺うと「お客さまから『おいしかったよ』と言ってもらえた時はやりがいを感じる。そのひと言は、私にとって1番のパワーの源。さらに追及してより良質な野菜を栽培し、期待してくれているお客さまのために頑張っていきたい」と意気込みます。
最後に、今後の目標を訊ねてみました。
「こだわりの農法をより多くの方に広め、これから農業を始めようと思っている若い方に農業の可能性を伝えたい」。
八木澤さんは、今日も朝早くから畑に向かい、すくすく育つ野菜の成長を見守ります。

ジャガイモの生育状況について話し合う大室さん(中)と八木澤さん(左)ら。


石井 康平 さん(34歳)

(狭山市北入曽)

少年時代からの夢を実現。
指導農家と塾生の
新規就農ストーリー

キッカケは「サツマイモ掘り大会」

狭山市北入曽。細い路地を抜けたその先には、住宅に囲まれた農地が広がります。秋も徐々に深まり始めたこの日、1人の青年が農作業に勤しんでいます。
彼の名は、石井康平さん。地元出身の34歳です。サラリーマン家庭で育った石井さんは、非農業系の大学を卒業し、茨城県の農業法人に就職。キャベツやハクサイ、ネギなどを生産してきました。そして10年が過ぎ、「そろそろ1人でやってみよう」と一念発起。地元に戻り、「いるま地域明日の農業担い手育成塾」に入塾し、指導農家を務める田口利明さんと共に農作業に励んでいます。
石井さんが農業を志そうと思い立ったのは、少年時代にまで遡ります。幼少の頃から家族で山登りに出掛けるなど、アウトドア派だった石井少年は、地元の「サツマイモ掘り大会」に参加。土の中から出てくる大きなサツマイモを目にし、農業に魅了されます。以来、「自然の中で仕事をしたい」「自分で育てた野菜を自分で食べたい」という思いが芽生え、ようやく実現できるまでになったのです。

運転歴は約10年。場所は変われど、常に安全第一です。

過去とのギャップは
経験と学びの姿勢でカバー

石井さんは、毎朝8時から田口さんと共に収穫や出荷調整、苗の水やり、畑の管理など、一連の作業をこなします。農業法人で10年のキャリアを持つ石井さんにとって、これらの作業は「お手のもの」と思いきや…。
「農業法人では、1つ1つの作業は分担制。でも個人だと、自分1人ですべての作業をこなさなければならない。全体像を掴み、いかに効率良く作業をするか、日々勉強している」と話します。また、こうも付け加えます。
「ここは住宅街。道路を汚さないよう、タイヤに付いた土をしっかりと落とすなど、近隣への配慮も必要。地方では考えられなかった“都市農業らしさ”を味わっている」と笑います。
これまでとのギャップを少なからず感じている石井さん。田口さんは、塾生の石井さんをどのように見ているのでしょうか?
「素直な性格で、学ぼうとする姿勢が素晴らしい。トラクターの運転も上手で、出荷作業は私より丁寧かも」と嬉しそうな表情を浮かべます。田口さんは、その仕事っぷりに手応えを感じているようです。

初めての小松菜栽培。「農業経験はあれど、品目が変わればイチから勉強!」と話す石井さん。修行はまだまだ続きます。

葉ネギの出来栄えを確認。このほど、以前勤めていた農業法人と販売契約を締結。ネギの栽培には力が入ります。

11月下旬に収穫予定の大豆。無農薬栽培のため、種まきのタイミングや防草には一層気を配ります。

人生の師

育成塾の期間は2年間。来年3月で卒業を迎えます。
「まずは長く続けられるスタイルを確立させたい。収入面も考えながら、年間を通じて上手に畑を回していきたい」と先を見据えます。田口さんも「農業は大変な仕事。農業でしっかりと生計を立てられるよう頑張ってほしい」とエールを送ります。
少年時代に参加した「サツマイモ掘り大会」をキッカケに、就農への夢を抱いた石井さん。月日が流れ、もうすぐその夢が叶おうとしています。ノウハウを授かった田口さんへの感謝の気持ちを胸に、農業の世界へ羽ばたきます。
「実は、夢へのキッカケを作ってくれたのも田口さんなんです。田口さんには感謝しかありません」
20数年前の「サツマイモ掘り大会」。その時主催したのは、偶然にも田口さんだったのです。
石井さんは、田口さんを「人生の師」と呼んでいます。

ノウハウを余すことなく伝授する田口さん(左)。「指導農家は田口さんでお願いしたい」と、石井さんは市の担当者に懇願したそうです。(※育成塾は塾生1人に対し、1人の指導農家が就きます。)

「いるま地域明日の農業担い手育成塾」とは…

新規就農希望者の円滑な就農を促進し、多様な担い手を育成する塾のこと。JAいるま野では、県・市町・農業委員会・指導農家と連携を図り、新規就農者の育成に取り組んでいます。詳しくは管内10市3町の行政、またはJAいるま野営農企画課(TEL:049-227-6153)までお問い合わせください。