飛躍を目指す農業女子!

鶴ヶ島市 町屋

石黒 未麻さん(42歳)

やりたいことができる幸せを噛みしめ、販売強化を目指す

就農4年目。地元農家も認める頑張り屋

冬の寒い風が吹きつける12月下旬、鶴ヶ島市の畑で朝早くから日が暮れるまで作業する石黒未麻さん。現在、約50アールの面積でサツマイモやハクサイ、ダイコン、キュウリなどの季節野菜を栽培しているほか、今年からは春ネギも栽培しています。「今年は、天気の影響もあまり受けることなく順調に生育しました」と笑顔で話す石黒さん。収穫した野菜は、JA鶴ヶ島農産物直売所やカインズ鶴ヶ島など量販店に出荷しています。
石黒さんは、就農4年目の新規就農者。2018年に農業大学校を卒業し、2019年には「いるま地域明日の農業担い手育成塾」を卒塾。指導農家から栽培方法などを教えてもらいながら励んできました。その付き合いは今でも続いていると言います。その懸命な姿にまわりの農家は「本当に良く頑張っている」「いつ顔を見に来ても黙々と作業していて頑張り屋だ」などとほめていました。寒さに負けないほどの熱い想いが伝わってきますね。

落ち葉堆肥。2年ほどかけて完成させた堆肥が野菜の栄養になります。

鶴ヶ島市で農業を始めたきっかけとは…自分に見合った地域性

そんな石黒さんに農業を始めたきっかけを伺いました。
「もともと自ら野菜を作って自給自足がしたいと思っていたんです。和菓子屋さんに勤めていた頃、原材料に興味を持ったことがきっかけで、農業を営むにはどこが一番最適なのか北日本、南日本を旅しました。結果、都心に近い埼玉県で農業を始めれば、販売面も期待ができ、更に多品目の野菜を生産している鶴ヶ島市が一番だと思い、就農先に決めました」と笑顔で話します。
しかし、「就農当時は、右も左も分からず毎日体はクタクタでした…。苗を植える適期はいつなのか、収穫時期はいつが適しているのかなど年間通してのスケジュールを立てるので精一杯でした」と苦悩を明かします。「その頃は確かに苦戦しましたが、やはり昔からやりたかったことが今元気で楽しくできていることは幸せで、本当に飽きないんです。地元の方からも応援していただけて今となっては、良い経験でした」と明るく話してくれました。
そして石黒さんは「私は、今まで栽培したことのない野菜の苗を植えてみることや、作ったことのない肥料を作ってみることなど新しいことに挑戦することが好きです。時には近所の農家に反対されることもありますが、最後には『まずはやってみな!』と背中を押してくれます。のびのびと野菜づくりができる幸せを噛みしめています。また、ひとつの作物ではなく、多品目を栽培することが楽しいです。そんな私には、ここ鶴ヶ島市がぴったりです!」。いつもにこやかな石黒さんは、地域の方とも良好な関係を築いていました。
野菜づくりがそのまま趣味になってしまったという石黒さん。ほかに趣味はないか伺うと…。「ほかにも私は料理も好きなので、野菜に合った調理法を考えながら料理して素材本来の甘みや香りを味わうことも楽しみのひとつです」と話してくれました。根っからの野菜好きのようですね。

10月~11月にかけて収穫したサツマイモ。坂戸カントリーエレベーターのもみ殻を使って追熟させます。

順調に生育している春ネギの生育状況を確認。寒さに負けないよう大切に育てています。

今後も変わらず農業に励みより一層の販売強化

将来について伺うと…
「これまで通り地域の方と和気あいあいと農業に励んでいくとともに、将来は規格を安定させ収量を増やしていくほか、販売にもより一層の力を入れて安定した農業を続けていきたいです。近所には、定年退職後に農業を始めた農家も多くいます。私も長くに渡り農業を続けていけるこの地域の環境で今後も頑張っていきたいと思います」。
野菜をこよなく愛する石黒さんはまさに、今後の飛躍が楽しみな農業女子。やりたいことができる幸せを噛みしめ、今日も農業に励みます。

「もう少し大きくなったら、いよいよ収穫です」と収穫前のレタスを見て誇らしげに話します。

 

※「いるま地域明日の農業担い手育成塾」とは…市町や県農林振興センター、JAらが連携し、2011年3月から開設。新規就農希望者に対して積極的に営農相談活動や営農実践研修を行い、確実に就農できる就農直結型の取り組みを目指し、農業を仕事にしたい意欲ある新規就農を希望する方を応援します。現在JA管内では22人の塾生が入塾し、就農を目指しています。


入間市 宮寺

岡田 茜さん(31歳)

将来の目標を叶えるために邁進中、努力を重ねる農業女子

農業女子は都内出身販路拡大に向けて取り組む努力家

冬の寒さが身に染みる12月下旬、入間市宮寺の 圃場 ほじょう で悴む手を温めながら黙々と作業に勤しんでいるのは、今回の主人公である岡田茜さん。2021年9月に新規就農したばかりの若手農業女子です。現在は約50アールの面積でホウレンソウやピーマン、オクラなど7品目の季節野菜を栽培しています。栽培した野菜は量販店を中心に出荷されるほか、入間市が主催するイベントなどでも販売され人気を博しています。「自分が更に安定的に多品目の野菜を栽培できるようになったら、ネット販売をすることも考えています。もちろんJA入間農産物直売所にも出荷をしたいと思っています!」そう意気込む岡田さんからは確かな熱意が伝わってきます。
実は、農業とは縁遠い の一般家庭で育ったという岡田さん。東京農業大学に進学後、当時行っていた農業ボランティアでの農作業の手伝いを通して「いつかは自分で独立して農業をやりたい」という想いが芽生えたと言います。そんな彼女は何故、入間市で農業を始めたのでしょうか…。

カブの成長を確認。大きく育てるためにも栽培管理は欠かせません。

理想とのギャップ そして出会った目標となる農園

同大学を卒業後、本格的に農業を学ぶために上尾市にある大手農業法人に就職した岡田さん。しかし、そこで待っていたのは大手農業法人ならではの苦悩でした。「就職してからは、栽培管理の基礎は学ぶことはできました。ですが、大規模だったため仕事が細分化されており、いずれ独立を考えていた私にとって、一連の栽培工程を学ぶという意味では少し違う環境だったかもしれません…。」
同農業法人で2年間学んだ後に、岡田さんは「次に学ぶ就職先の土地で就農する」という決意を胸に全国各地を回りました。その中で自分が学ぶ先として「一連の栽培工程が学べる規模の法人であること」・「多品目の野菜を栽培していること」・「都内出身の自分に合う風土の関東圏内であること」が必須だと感じ、1年をかけた末、遂に出会ったのが入間市宮寺にある「ぼくらの農園」だったのです。

旬を迎えているホウレンソウ。ぼくらの農園で培った知識を活かして作る野菜は栄養満点!

「やるべき時期にやるべきことをやる」ぼくらの農園での教えを活かして

「ぼくらの農園」は入間市宮寺で岩田浩さん(43)が営む農業法人。トマトやニンジン、ネギなどの季節野菜を栽培しており、JAへの出荷の他に量販店や市が主催するイベントにも積極的に出店しています。同園への就職をきっかけに、求めていた播種から収穫までの一連の栽培工程を学び始めた岡田さん。岩田さんからの教えの中で、特に印象に残っている言葉は「やるべき時期にやるべきことをやる」だと教えてくれました。
「定植などは1日作業が遅れてしまうと、後の作業が10日ズレてしまうことがあります。スケジュール管理を適切に行うことが、結果として良質で十分な収量の野菜を作ることに繋がる。この教えは今も忘れずに守っています」。
同園では毎日が失敗と経験の日々だったと話す岡田さん、就職してから約5年が経った2021年の春頃、彼女にとって一つの転機が訪れます。なんと岩田さんから「独立してみないか」という提案を受けたのです。同園で担当していたホウレンソウやカブなどの販路の一部を譲り受け、岡田さんにとっては念願だった「独立して農業をする」という夢を叶えることができました

入間市が主催のイベントでの一幕。直接、消費者に野菜を届けられて、思わず笑顔がこぼれます。

皆の居場所となるような農園を目指して 農業女子が想う将来の目標

独立してからも若手農家は毎日が勉強の日々だと話す岡田さん。今は「いるま地域明日の農業担い手育成塾」などを通じて知識を蓄えている最中とのこと。「吸収した知識を使って試行錯誤し、それが実際に実を結んだときが楽しいですね。私自身がステップアップしていると感じます。また、自分の作った野菜を『美味しい!』と言ってもらえることが何よりもやる気に繋がります」そう話す岡田さんからは満面の笑みがこぼれます。
最後に岡田さんに将来の目標を訊ねてみました。
「将来の目標としては、老若男女さまざまな人が集まる『プラットフォーム(居場所)』のような農園を作るのが夢です。人生に疲れてしまった人たちが農業を通じて心の疲れを癒すことができる。そんな居心地が良い農園を作っていくためにも、まずは栽培面積や販路を拡大し、ゆくゆくは法人化を目指して、今は『やるべき時期にやるべきこと』をして着実に頑張っています!」
プラットフォームとなるような農園を作るという更なる目標を叶えるためにも、岡田さんの歩みはこれからも止まることはありません。