県内JA 生産者の声

農業を取り巻く状況は依然として厳しい上に、消費者が農業や生産者について知る機会も十分にあるとは言えない。今回の特集では県内各JAの代表者からのメッセージを紹介する。農業の“今”を、生産者の訴えを、ぜひ感じてもらいたい。

①⋯役歴・所属

②⋯栽培品目・面積

JAあさか野 清水さん

JAあさか野

新座市あたご

清水 しみず 徹三 てつぞう さん(52)

①⋯役歴・所属
②⋯栽培品目・面積

①令和7年~JAあさか野青年部部長、新座市農業委員会委員所属

②サトイモ、ニンジン、ホウレンソウなど
正直、農業は好きじゃないと続けられない、安定とは程遠い職業、というのが本音です。天候との戦いを乗り越え、やっと収穫した作物が、市場の価格変動によって二束三文にしかならないこともあり、経費を引くとほとんど手元に残らない悔しさがあります。
一番は、安定した価格で買い取ってもらえること。そして、普段皆さんが食べている農作物ひとつひとつに、生産者の多くの苦労が詰まっていることを知っていただけたら嬉しいです。

JA埼玉みずほ 植竹さん

JA埼玉みずほ

幸手市天神島
合同会社Enoki Rice

植竹 うえたけ 一寿 かずひさ さん(55)

①⋯役歴・所属
②⋯栽培品目・面積

①令和4年~幸手市農業後継者部会副代表、令和5年~幸手市稲作研究会会長、令和7年~幸手市有機農業推進協議会
会長

②米 30ヘクタール
私たち稲作農家は、気候変動や担い手不足など生産環境が厳しさを増す中でも、安全・安心でおいしいお米を消費者の皆さまに届ける責任を胸に、日々努力を重ねています。自然と向き合う営みは決して容易ではありませんが、皆さまの「おいしい」の声が何よりの励みです。
豊かな田園風景と食文化を次世代へつなぐため、地域の担い手としての誇りを持ち、一粒一粒に心を込めて農業に取り組んでいます。

JA南彩 大澤さん

JA南彩

久喜市菖蒲町上大崎
梨の大澤農園

大澤 おおさわ 一樹 かずき さん(49)

①⋯役歴・所属
②⋯栽培品目・面積

①令和5年~JA南彩理事・JA南彩アグリスト(青年部)所属令和7年~埼玉県果実連合会副会長

②梨 約1ヘクタール
近年の異常気象による猛暑や、資材・肥料の価格高騰など厳しい環境が続いていますが、丹精込めて育てた梨を“待っていました”と声をかけていただけることが、何よりの励みです。栽培には一つ一つこだわりを持ち、品質の高い梨をお届けできるよう日々工夫を重ね、愛情を注いでいます。農業は苦労も多いですが、消費者の皆さまに喜んでいただける瞬間に大きなやりがいを感じます。国産農産物を選んでいただくことが、私たち農家の力となり、地域の農業を守ることにつながります。国消国産の輪が広がることを願い、これからも誇りをもって梨づくりに励んでまいります。

JAさいたま 森田さん

JAさいたま

さいたま市見沼区

森田 もりた 泰弘 やすひろ さん(54)

①⋯役歴・所属
②⋯栽培品目・面積

①令和2年~JAさいたま農業後継者理事
令和3年~5年 JA埼玉県青年部協議会委員長

②イチゴ、露地野菜 約1ヘクタール
私が県の委員長になった頃にちょうどコロナウイルスが流行り出して、米の減反が叫ばれ、そして今、米価をめぐって混乱が続いています。良く言えば、今まで農業に関心のなかった人がこちらを気にし始めたとも言えます。ただ、赤字なら辞めればいいのに、と思われているのは、悲しいです。私たちは消費者の食を守っている、農地を守っているのだと自覚する必要があるし、営農の手を止めるわけにはいかないのです。
若い人が魅力を感じるような、尊敬できるような“かっこいい”農家でありたいと考えています。農家が元気で頑張ればJA職員もやりがいが出て、お互いにとっていい関係になると思います。

JA越谷市 藤井さん

JA越谷市

越谷市小曽川
フジイ園芸

藤井 ふじい 光樹 みつき さん(42)

①⋯役歴・所属
②⋯栽培品目・面積

①令和3年~JA越谷市園芸部部長

②コマツナ 約10ヘクタール、カリフラワー 約20アール
肥料・農薬・資材の価格や人件費が高騰する中、野菜の値段は上がってきていません。主要品目のコマツナは一年を通して市場へ契約出荷をしていますが、近年の異常気象による影響も大きく、契約出荷数量を確保することに大変苦労しています。そんな中、繁忙時期に栽培が上手く回せた時や、出荷先(学校給食)や知人から野菜の出来栄えを褒められた時、おいしかったと言われた時にやりがいを感じています。消費者の方には、一年通して野菜を買えるありがたさや苦労を知ってもらい、価格面においてもご理解いただけると嬉しいです。

JAさいかつ 日暮さん

JAさいかつ

吉川市三輪野江
農事組合法人 吉川受託協会

日暮 ひぐらし 美明 よしあき さん(55)

①⋯役歴・所属
②⋯栽培品目・面積

①令和元年~吉川米の会会長
令和3年~JAクラブ副会長

②米 約130ヘクタール、ナマズ養殖
農業を続けることは決して楽ではありませんが、「おいしいお米を届けたい」という想いが私たちの原動力です。吉川市では特別栽培米を「吉川のしずく」としてブランド化し、圃場ごとに測った食味値が80以上のお米だけを選んでいます。標準が65とされる中で、この数値は品質への自信そのものです。
今年は7月末から雨が少なく水の確保に苦労しましたが、香り豊かで甘みがあり、もっちりとしたお米に仕上がるよう全力を注ぎました。ぜひ新米を味わっていただき、日本の農業を支えてくださると嬉しいです。

JAほくさい 小松さん

JAほくさい

行田市荒木
(株)ノムラファーム

小松 こまつ 裕幸 ひろゆき さん(55)

①⋯役歴・所属
②⋯栽培品目・面積

①令和5年~
JAほくさい監事・
行田豆吉クラブ代表

②米 約25ヘクタール、小麦 約10ヘクタール
ビール大麦 約11ヘクタール
行田在来枝豆「さきたまめ」約25アール
義父が高齢になったため、JAを退職し専業農家になりました。育苗や田植えは重労働で、猛暑下の除草や追肥は体力勝負です。大変な作業ですが、消費者においしいお米を届け、日本の食卓を守っているという誇りもあります。最近の米価格の高騰は私も驚いていますが、適正価格を考える良い機会だとも思っています。また「さきたまめ」は、仲間と土づくりや肥料などの情報交換をしながら品質向上に努めています。これからも、国消国産を旗印に「さきたまめ」を後世につなぐことに尽力します。

JAいるま野 黒岩さん

JAいるま野

鶴ヶ島市藤金
黒岩農園

黒岩 くろいわ 一太 いちた さん(41)

①⋯役歴・所属
②⋯栽培品目・面積

①令和7年~JAいるま野青年後継者組織連絡協議会会長

②ナス、ホウレンソウ、ニンジンなど約3ヘクタール
資材等の価格は従来と比較して約3倍にもなっているのが現状です。近年の猛暑・水不足に対して、追加で井戸を掘るなどの対応もしました。農業を取り巻く環境は依然として厳しいですが、それでも私は地元の「旬」で新鮮な野菜を消費者にお届けするため、安全・安心に食べられる野菜をお届けするため、日々農業に励んでいます。
農産物は「スイッチを押せば出来上がり!」でもなければ、作ったもの全てが商品になるわけでもありません。毎日、農家が我が子のように大切に愛情を込めて農産物を育てていることを知っていただければ、我々の励みにもつながります。

JAちちぶ 石橋さん

JAちちぶ

秩父市太田
石橋農園

石橋 いしばし おさむ さん(53)

①⋯役歴・所属
②⋯栽培品目・面積

①平成28年~JAちちぶ園芸部会所属令和3年~同部会青年部長

②キュウリ 20アール、トマト 2アール
地域ブランドの「秩父きゅうり」は春・秋作でハウス栽培を行い、市場出荷しています。このキュウリは個人ではなく、部会で出荷しているため、部会全体で品質向上に取り組んでいます。私が青年部長を務めるこの部会は広い年齢層が所属していて、講習会も他産地に負けないくらい熱心に行っています。きっちりした栽培・規格講習会、出荷時の厳しい検査により、高い評価を得ています。
ベテランと若手が共に高め合いながら頑張っていますので、ぜひ買って食べて応援してもらいたいです。

JA埼玉中央 小池さん

JA埼玉中央

吉見町南吉見

小池 こいけ 貴史 たかし さん(47)

①⋯役歴・所属
②⋯栽培品目・面積

①平成28年~
JA埼玉中央吉見町主穀研究会理事
令和4年~吉見町湛直水稲栽培研究会会長

②米 約13ヘクタール、小麦 約2ヘクタール
農業関係の会社を退職後、2011年に親元就農しました。県認証特別栽培にも取り組み、品質と食味にこだわった安全・安心な米作りを実践しています。
肥料や農薬、資材、燃料代が上がっている中ではありますが、受け継いだ田んぼを守っていくため、また、おいしいお米を楽しみにしてくれている方のために、精一杯頑張っています。ぜひ、米価への価格転嫁は理解してほしいなと思います。

JA埼玉ひびきの 白須さん

JA埼玉ひびきの

上里町七本木

白須 しらす 貴裕 たかひろ さん(45)

①⋯役歴・所属
②⋯栽培品目・面積

①令和元年~2年
上里一元出荷協議会白菜・
キャベツ部会部会長

②ハクサイ 6ヘクタールブロッコリー 6ヘクタール、ネギ 2ヘクタール
上里町のハクサイの生産は、JAの系統出荷で県内の8割以上を占めるほど。そんな一大産地を支える担い手であることに誇りを持って、日々農業に励んでいます。また、若手が部会の運営に積極的に参加し、それをベテランが支えるという、世代間で良い連帯ができていますし、JAと有志農家が協力してJ―GAPの取得に取り組むなど、とても活気のある地域でもあります。
酷暑などの天候不順が経営に大きな影響を及ぼしていますが、私たち生産者は様々な努力をして消費者の皆さんのもとに野菜をお届けしています。皆さんには野菜をいっぱい食べてもらうことで、産地を応援していただきたいです。

JAふかや 塚越さん

JAふかや

深谷市柏合

塚越 つかごし 健一 けんいち さん(48)

①⋯役歴・所属
②⋯栽培品目・面積

①令和7年~JAふかや
深谷ゆり部会部会長

②LAユリ 約120アール
日本のユリ生産者の球根は、オランダからの輸入がほとんどです。日本国内の生産資材等の価格高騰に加え、オランダ国内の情勢の変化による値上がりの影響を受け、厳しい状況が続いています。また、近年の猛暑の影響で、通常の栽培方法では良質なユリを作ることは難しく、生産者は高温に強い品種を試験的に栽培して選定したり、遮熱材やミストを使って栽培するなど様々な取り組みをしています。
そんな中でも、秀品が作れると非常に嬉しく、市場などからお褒めの言葉をいただくと励みになります。より良いものが作れるように努力していますので、ぜひ手に取っていただき、1本でも家に飾ってもらえると嬉しいです。

JAくまがや 鯨井さん

JAくまがや

熊谷市玉井
鯨井農場

鯨井 くじらい 義之 よしゆき さん(44)

①⋯役歴・所属
②⋯栽培品目・面積

①令和6年~JAくまがやアグリユース会長
令和7年~JA埼玉県青年部協議会副委員長

②米 11ヘクタール、小麦 13ヘクタール、ブロッコリー 1ヘクタール
暑い街として有名な熊谷市で、米麦や露地野菜を生産しています。日々、農業の根幹である土づくりに重点を置き、真剣に農業に取り組んでいます。私は、農家の「家」は化学の「化」と考えています。年々暑さが増している気候変動へのアプローチとして、土壌診断を有効活用し、農産物が育ちやすい環境を整えるため、適正な土づくりを行っています。
今後も、作物の収穫量増加や品質向上に努め、多くの消費者に満足してもらえる農産物づくりを心がけていきたいです。