きたのは、設備や資材が少ない自分にとってはありがたいことでした。そうした農機の一部は今でも現役で使っており、農業を支えてくれる大事な存在です」。農業塾を卒業後は親族や近隣農家などから約70㌃の農地を借り、中学時代の同級生と共に独立。しかし、そんな佐藤さんを待ち構えていたのは新たな課題でした。就農当初は約20品目の露地野菜を栽培し、自ら量販店などへ販路開拓を行っていた佐藤さん。しかし、初年度の売上は約500万円。経費などを差し引くと殆ど手元には残らなかったといいます。そこで2年目は売上目標を1000万円に設定し、「1日3万円を売り上げるには、何をいくつ作れば良いのか」を考え、袋詰めにしたラディッシュを100円で販売し、見事目標を達成。その後は、生産性と出荷率の良い農産物を選択と集中し、規模を拡大しながら順調に売上を伸ばしていましたが、売上が4000万円台に達したときに、再び壁に当たりました。「規模を拡大したのは良いものの生産人数は2人のまま。生産効率が悪くなった結果、秀品率が下がり利益率も低迷しました」。そこで状況打開のために、県内外の農家のもとを視察し、学んだことは「土づくりの重要性」だと話します。「茨城県の農家のもとで学んだ土づくりは一つの転機だったと思います。秀品率が高ければ袋数も多くなり、一つの袋詰めにかかる時間も減るため人件費の削減にも繋がる。生産する側が出荷調整作業を意識する必要があったことに気付けたのは大きかったですね」。こうして秀品率が改善したことで、売上が再び向上した所沢ゼロファーム。現在はパートなどを合わせて約20人以上を擁ようし、売上も昨年度は2億5000万円を達成することができました。「所沢の農業をひっくり返す」をモットーに掲げる所沢ゼロファーム。そんな佐藤さんに今後の目標を訊ねてみました。「今後の目標は生成AIを用いて日々のデータを収集し、自社独自の栽培暦を作ることです。既に一部の作物ではデータを取り始めており、この精度を高め、社員の週間スケジュールを確立し働きやすい環境を整えることで、更なる効率化と農作物の安定供給を目指していきたいと考えています。また、所沢市は都市近郊に位置していることが利点です。この利点を活かし、大規模都市近郊農業を確立することで、所沢市の農業全体を活性化させ、この土地は農業をする人にとって魅力ある場所だというのを知ってもらいたいですね」。この新たな目標の達成のため、佐藤さんの躍進はこれからも続いていきます。失敗からの学びそして達成した売上2億円超え若手農業者の新たな目標目指すのはAIを用いた効率化と地域の振興「いるま野」2025.12 主力品種のエダマメ。所沢ゼロファームのエダマメは味の濃さが特長です。愛車のトラクターたち。農作業を支える大切な存在です!ゴボウの生育状況の確認。これからの出荷に向けて確認は念入りに。05
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