JAいるま野 広報7月号_最終
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設立とその背景 管内の農業は従事者の高齢化と兼業化が進み、担い手不足による遊休農地の拡大が深刻な問題となっています。このような状況の中、JAの役割として水田・畑作・中山間地域農業の継続的発展のため、2006年11月に農用地の維持管理および農業経営を目的としたJA出資型農業法人、いるま野アグリが設立されます。 設立当初は、07年より導入された品目横断的経営安定対策(※1)に対応し、条件を満たすことのできない小規模麦作農家への補助金の受け皿組織として役割を果たしました。その後、当時JAが東部システムセンター(現在のいるま野アグリの場所)で行なっていた苗の生産を業務受託。また08年には、別の農作業受託組織から農作業受託事業が移管されます。さらに10年6月には、補助金の要件が変更になったことから、設立時の出資農家の株を買い取り、JA100%出資の一般株式会社として新たなスタートを切り、現在に至ります。 同社の事業は、大きく3つに分けられます。①農作業の受委託事業②農作物の生産・販売事業③苗の生産・販売事業 この他、新規就農希望者の研修を行い地域農業の担い手を育成。JAグループをはじめとした農業関連団体の職場研修や視察の受け入れ、圃ほじょう場実験なども行い、農業技術の向上に努めています。遊休農地の解消に寄与する作業受委託と生産・販売 このうち、設立時の目的達成に向けた事業が「①農作業の受委託事業」です。遊休農地解消のため、組合員から農作業の全作業および一部作業を受託し、農地の維持・管理を行ないます。また、同社のほか管内に9つある農作業受託組織や認定農業者らとも連携し、農作業の受委託作業も行なっています。 また、「②農作物の生産・販売事業」については、同社で農地の保有は行なわず、農地中間管理機構(農地集積バンク)(※2)を活用した借地で農作物を生産しています。作物別に見ると(表1)、水稲・小麦・大豆を中心に、近年ではネギやニンニクなど新たな農作物の生産にも取り組んでいます。 それでは、同社が農作物別にどのように取り組んでいるのかクローズアップしてみます。《水稲》 同社のある富士見市は、JA管内でも有数の米どころ。いるま野アグリでは、JAいるま野南畑米生産組合と連携、協力し、農作業の省力化や低コスト化につながる栽培技術の確立や普及に努めています。 まず、そのひとつが「密みっぱそしょく播疎植」栽培です。密播疎植は、苗箱1箱あたりの播はしゅ種量を増やす密植と、田植え時に苗の植え付け株数を少なくし、株間を広げる疎植を組み合わせた技術。苗箱数や労力を減らすと同時に、倒伏に強い茎の生育が期待できます。 もうひとつが、16年から取り組んでいる水稲種子の「鉄コーティング」作業です。鉄コーティングした種子は、圃場に直ちょくは播することが可能です。育苗作業が不要で設備や資材費を削減できるとともに、苗の運搬も不要。さらに肥料や除草剤、殺虫殺菌剤の散布も同時にできる栽培技術です。 また、今年度は多収性品種「ちほみのり」の栽培にも取り組んでおり、さらなる遊休農地対策につなげる考えです。■表1:作業面積(単位:ヘクタール)(※1)品目横断的経営安定対策:政府が07年度に始めた国際競争力の強化を目的にした政策。集落営農の組織化を加速させた反面、小規模農家が支援を受けられなくなった。(※2)農地中間管理(農地集積バンク):農業者に対して農地の集積を促す組織。各県の同機構が農業者から農地を一時的に借りて集約し、農業者に貸し付ける。いるま野アグリでは富士見市を中心に、川越市、日高市など約15㌶を活用し、二毛作を実施している。5日間ほど浸種した種子に鉄粉と焼しょうせっこう石膏を混ぜ合わせ、シートに広げ酸化を促します。1週間ほどで完成した種子は、発芽テストを経て圃場に直播します。発芽率は一般的な苗とほぼ変わりません。2014年度2015年度2016年度2017年度2018年度水稲受託面積31.0 31.7 31.5 31.5 24.4 直営面積(内米粉用米)3.7 3.7 3.5 3.3(1.1)10.6(9.2)合 計34.7 35.4 35.0 34.8 35.0 小麦受託面積9.7 9.6 9.6 8.7 8.9 直営面積0.5 2.0 7.4 11.7 18.8 合 計10.2 11.6 17.0 20.4 27.7 大豆受託面積9.4 9.4 9.4 9.8 9.8 直営面積0.5 2.5 5.6 7.2 7.2 合 計9.9 11.9 15.0 17.0 17.0 03「いるま野」2019.7

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