JAいるま野 広報誌 2018.11 | No.271
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 ⑴ はじめに 全国各地で数多の「観測史上最高」を記録した夏が終わり、平成最後となる米の収穫を無事に終え、ひと息付かれている方も多いのではないでしょうか。 ここから苗づくりの準備が始まるまでの間が、稲作における「農閑期」に当たる訳ですが、この時期に、翌年の米づくりに向けた準備がどこまで出来たかが、収穫後の明暗を分けることも少なくありません。 今回は、その中でも特に重要な「水田の土づくり」について紹介します。 ⑵ まずは「稲わら」から 「水田の土づくり」に欠かせないのが、有機物の投入です。 なかでも、最も低コストで取り組み易い方法が「稲わらのすき込み」ですが、すき込む時期が遅過ぎたり、稲わらの腐熟が不十分だったりすると、次の①〜③の様な弊害を起こす場合がありますので、注意が必要です。 ①浮きわらの発生 入水後、分解されなかった稲わらが一斉に浮き上がり、水面を覆って代かきや田植え作業の妨げとなります。 また、浮きわらの量が多いと施用したジャンボ剤や豆つぶ剤が拡散するのを邪魔して薬害を引き起こしたり、田面に届く太陽光を遮ぎって、稲の生育を遅らせたりするなど、思いもよらない被害が発生することがあります。 ②窒素の欠乏 稲わら等の未分解有機物は、土壌微生物に分解される過程で窒素を消費します。 稲わらのすき込み後、分解に必要な時間と、微生物が活動可能な温度が確保されていれば良いのですが、これが田植え後に持ち越されると、施用した元肥の窒素を先に消費してしまうため、肥料不足に陥る場合があります。 ③ガス害の発生 地温が上昇し、土壌微生物の活動が盛んになることは、土壌中の酸素の消費量が増えることにもつながります。 特に、入水後は地表からの酸素の供給が絶たれてしまうので酸欠状態になり易く、これが硫化水素等の有害ガス発生(ワキ)を招き、活着不良や根腐れによる欠株の発生といった症状を引き起こします。 今年は有害ガスの発生が多く、植えたばかりの稲の根が真っ黒に変色して消失してしまう被害があちこちで見られました。 ⑶ すき込みは暖かいうちに こうした弊害を起こさないためには、地温が高く微生物の活動が活発なうちに、分解に必要な窒素や微生物を補充して作業を行うことが何より大切です。 霜が降りる前に、「スーパーワラブレンド」や「わら分解キング」を施用して、地力の高い水田づくりを目指しましょう。 なお、早めのすき込みは次年度の病害虫防除にもなります。 右の写真は、収穫後の再生株(孫生え)ですが、多数の株が縞葉枯病に感染し、黄色く変色していることがわかります。 この状態のまま放置しておくと、縞葉枯病ウイルスを持ったヒメトビウンカが日毎に増えてしまうので、すき込みを兼ねた早めの耕うんが、効果的な対策となります。 また、再生株の除去は、検査時に等級落ちの原因となる斑点米カメムシ類対策にもなるので、まさに「一石三鳥」です。川越農林振興センター 農業支援部 ☎049-242-1804秋から始める水田の土づくり07「いるま野」2018.11

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