JAいるま野 広報誌 2018.6 | No.266
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 石灰資材の施用は作物の生育を良くしますが、過剰施用は生育を悪くします。石灰の働きを知って、適正に施用しましょう。一 土壌酸度の矯正 一般的に日本の土壌は、降雨で石灰(カルシウム)等のアルカリ分が流れ、酸性化し、㏗(ピーエイチ:土壌酸度)が下がります。 石灰資材は、各作物が良く生育できる範囲まで㏗を上げるために施用します(下図参照)。二 土中の養分を引き出す 土壌を酸性からアルカリ性に近づけると、土壌中の微生物(特に細菌類)の活動が盛んになります。その結果、枯れた植物等に由来する有機態窒素の分解が促進され、植物が養分として利用しやすい硝酸態窒素等が増えます。 また、当地域の畑の多くを占める火山灰土壌(黒ボク土)は、低㏗であるほどリン酸を固定するため、㏗を上げると作物がリン酸を吸いやすくなります。三 作物はアルカリ性が嫌い 多くの作物は㏗5·5〜6·5の弱酸性から微酸性が好きです。当地域の土壌は雨にさらされても強酸性にはならないため、作物の多くは、石灰資材を施用しなくてもそれなりに育ちます。  ところが、石灰を過剰施用し、土壌がアルカリ性になると、リン酸が石灰と結合して植物が吸えなくなり、根張りが悪いなど、初期から生育が滞ります。 酸性嫌いで有名なほうれんそうでさえ、好きなのは中性です。㏗を上げるのは簡単ですが、上げすぎると作れる作物が無く、下げるには時間や費用がかかるので過剰施用に注意しましょう。四 過剰施用の原因 雨で流れる石灰量は土質や㏗等によって異なります。苦土石灰に換算して、1年でせいぜい1a当たり6㎏でしょう。「残すのも面倒なので狭い面積に石灰を1袋施用」「本にどの作物も石灰施用と書いてあったので、春秋の年二回施用」「安かったので鶏糞を多量施用」「鶏糞を堆肥と思い多量施用」(鶏糞は石灰分を含む)といったことで高㏗となり、作物の生育を悪くした例が、畑仕事を始めたばかりの方を中心に見られます。五 石灰が十分でも石灰欠乏? カルシウムは根による水の吸収と一緒に植物体内に吸収され、水とともに移動・分配されます。さといもの「芽つぶれ症」やトマトの「尻腐れ症」は石灰欠乏症ですが、石灰が土壌に十分あるのに、水の不足等によって吸収・分配ができないために発生することが多いです。土壌診断を行って、石灰の不足が原因であることを確認してから石灰を施用するようにしましょう。川越農林振興センター 農業支援部 ☎049-242-1804石灰のまきすぎ注意<図> 作物別好適pHくり水稲、いちご、らっかせい、たまねぎ、かぶ、ごぼう、にんじん、うめ、りんご大麦、いちじく、ほうれんそうじゃがいもブルーベリー、茶、ツツジ陸稲、そば、さつまいも、やまのいも、みかん、もも大豆、小豆、いんげん、えだまめ、そらまめ、なす、ピーマン、かぼちゃ、きゅうり、すいか、メロン、スイートコーン、うど、カリフラワー、ブロッコリー、はくさい、ちんげんさい、こまつな、しゅんぎく、セロリ、レタス、にら、ねぎ、みつば、しょうが、さといも、なし、キウイフルーツ、かき、ゆず、キク小麦、エンドウ、トマト、だいこん、キャベツ、アスパラガス、ぶどう、あんず、カーネーション07「いるま野」2018.6pH7.2~7.5微アルカリ性pH7.5~8.0弱アルカリ性pH8~強アルカリ性強酸性4.55.05.56.06.57.0弱酸性微酸性中 性

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